ITエンジニア志望の高校生へ

滋賀大学データサイエンス学部や、同志社大学文化情報学部など「データサイエンティスト育成系」の進路に向く人、向かない人は? 工学部情報工学科との違いは?

投稿日:2018年12月23日 更新日:

はじめに:「データサイエンス」という真新しい学問を広める記事を書こうと思った

こんにちは、げんごにあです。

従来の文系・理系といった枠組みにとらわれない、学際的な「まなび」を提供する場として、文理融合型の学部が存在感を増しつつあります。

最近、特に脚光をあびているのが、滋賀大学データサイエンス学部をはじめとする、データ分析スキルを持ったITエンジニア(いわゆるデータサイエンティスト)を育成する教育カリキュラム

「データサイエンス」の分かりやすい例として、よく用いられるのは、カーナビシステムに通信機能を持たせることによって、大量の車からデータを取得し、交通渋滞や交通事故が発生しやすい道路ポイントを特定できるようにした事例でしょう。

カーナビシステムのデータで、安全・快適なドライビングを支援するというデータ活用

カーナビシステムのデータで、安全・快適なドライビングを支援するというデータ活用

カーナビシステム以外でも、Amazonや楽天のネットショッピングなど、データ分析スキルが活かせる仕事は世に多く存在すると考えられており、今後、社会的ニーズの高まりが予想されることから、データ分析に強い人材を排出しようと考える大学が増えています。

本記事では、「データサイエンス」に興味を持つ高校生(や親御さん、教員の方々も……)へ向けて、関西地区を代表する2つの「データサイエンティスト育成系」学部の紹介を織り交ぜながら、この真新しい学問領域を「本命」として選択するに値するか否かの、【判断材料】をご提供します。

「データサイエンティスト育成系」学部のことをオススメする記事ではなく、(読者の皆様にとって)ご自身の進路として、それがふさわしい選択肢であるかどうかを決めていただく一助になることを目指した記事でありますこと、ご了承ください。

筆者「げんごにあ」のこと

大手メーカーに「社内SE」として勤務し、十年以上のキャリアを持つITエンジニアです。

自分自身のことを「データサイエンティスト」だと感じたことも、名乗ったことも、一度もありませんが、いちおう、「データサイエンティスト」に近い領域の実務に携わっています。

営業、生産管理から、経理にいたるまで、幅広い業務ジャンルの社内システム・データを活用し、「最適な企業経営判断」をサポートできるための情報システム構築に取り組んでいます。

保有資格は、ITストラテジスト、システム監査技術者(ともに経済産業省)など。

国立大学大学院修士課程を修了していますが、卒業時の成績表が悪すぎて「黒歴史」化しています

関西で「データサイエンス」を学べる大学と、その特色

関西地区では、滋賀大学(データサイエンス学部、2017年4月に新設)と同志社大学(文化情報学部、2005年4月に新設)の二校が、「データサイエンティスト育成系」学部で学生を募集するという、思い切った舵取りをし、この路線でグイグイ積極的に売り込んでいます。

まずは、これら2校をざっくりとご紹介します。

同じ「データサイエンティスト育成系」学部でも、比較してみると、かなり異なったキャラクターを持っていることが理解できて、興味深いです。

滋賀大学・データサイエンス学部

滋賀大学

滋賀大学

所在地は彦根市。

「彦根城からすぐ」という、歴史情緒あふれる街並みで過ごす学生生活は、印象深いものになるでしょう。

2017年4月に設立された、日本では初となるデータサイエンス学部です ------ カタカナ名称という、少し「ブッ飛んだ」学部の第一号が設置されたのは、国立大学だったのは意外ですね。

創立百年の歴史や、日本最大級のスケール(1学年500名)を誇る「大型の」経済学部が同じキャンパス内にあることを活かし、経済・経営関連の講義が豊富に提供されていることから、「企業のデータサイエンティスト」に強みを持つカリキュラム設計になっていることが特色です。

開講科目の一部(2018年度シラバスより抜粋)

データ分析系の科目(数学やコンピュータなど)とは別に、以下のような科目を履修できるようです。

学生時代、こういった学問を体系的に理解しておくことは、卒業後、社会や企業のデータを分析する上で、とても頼もしいバックグラウンド知識となってくれるに違いありません。

  • ミクロ経済学
  • マクロ経済学
  • 経営学
  • 簿記会計
  • 証券分析
  • 財務会計
  • 管理会計

カリキュラム情報について、さらに詳細を調べたい方は、滋賀大学のシラバス検索システムを徹底活用されると、十分な情報が得られると思います。

同志社大学・文化情報学部

同志社大学

同志社大学

所在地は京田辺市。

大学周辺は、静かで勉強に専念できる環境である一方、最寄り駅からは、徒歩15分ほど(かなりの坂道あり)。

キャンパスの美しさは、誉れ高いですね。

同志社大学・文化情報学部は、今でこそ「データサイエンス」を全面的にアピールしていますが、2005年4月の設立当初は、まだ世の中で「データサイエンス」が今ほど注目されていなかった時代。

そのような背景もあって、(文化情報学部のルーツである)文化や言語、行動など、ありとあらゆる領域の学問を【広く浅く】修めつつ、それに「データサイエンス」を付け加えるような教育カリキュラム設計となっていることが特色です。

開講科目の一部(2018年度シラバスより抜粋)

データ分析系の科目(数学やコンピュータなど)とは別に、以下のような科目を履修できるようです。

学部誕生のルーツが「文化情報」全般とだけあって、選択できる科目の幅広さは、滋賀大学・データサイエンス学部を凌駕しています。

  • 日本文化史
  • 文化計量学入門
  • 現代文化概論
  • 歴史文化情報入門
  • 伝統音楽論
  • 美術史学
  • 文化・社会人類学
  • ことばと文化
  • ことばの科学
  • ことばと社会
  • 世界の諸言語
  • 身体論
  • 認知科学入門
  • 人間と感性
  • 人間と文化

一方、経済・経営がらみの講義は見当たらず(ひょっとしたら、同志社大学に他学部履修制度があるのかも知れませんが、経済学部のある今出川キャンパスまでは、バスで一時間ほどかかるため、履修は厳しそう……)、企業のデータサイエンティストというより、もっと広い意味で社会をデータサイエンスする人材を育成しようとする大学側の意図が見え隠れしています。

カリキュラム情報について、さらに詳細を調べたい方は、同志社大学のシラバス検索システムを徹底活用されると、十分な情報が得られると思います。

その他の大学の動向(神戸大学、大阪大学)

滋賀大学や同志社大学のような「学部の新設」という大改革とまでいかなくても、「データサイエンス」をにらんだ教育カリキュラムを増強する動きをとる学校もあります。

たとえば神戸大学では、国際人間科学部、経済学部、経営学部、理学部、工学部、農学部、海事科学部の7学部に在籍する学生を対象に「数理・データサイエンス標準カリキュラムコース」を提供しているようです。

所定の単位を取得した学生は、(大学の卒業証書とは別に)コース修了認定書を得ることができ、卒業後のキャリア開拓に活用できるという制度です。

大阪大学や神戸大学といった、関西地区を代表する名門校がこのように動いている以上、他校もそれに追随する動きが、今後活発化するかも知れません。

少子化によって学生の奪い合いが激しくなり、何かと変化しやすい大学入試環境ですが、データサイエンス周辺の各校事情は随時チェックしたほうが良さそうです ------ フタを開けると、知らぬ間にデータサイエンス学部が新設されていた、ということも十分あり得ますので。

「データサイエンティスト育成系」学部へ進む前に考えたいこと

真新しい学部である分、「データサイエンティスト育成系」学部へ進むまでには、ぬかりなくチェックしておきたいことがあります。

以下ポイントは、最低限、頭の片隅にとどめておくようにしましょう。

工学部情報工学科と、何が違っているのか?

コンピュータやデータを専門的に学ぶ工学部(の情報工学科)も、一見すると、学問領域として「データサイエンス」にカブっているように思われます。

「データサイエンティスト育成系」学部と、工学部、両者の違いを意識することで、より明確に見えてくるものがあります。

入試科目が異なっています

文系でも理系でもない、いわゆる「文理融合学部」とされる、「データサイエンティスト育成系」学部。

幅広いバックグラウンドの学生を募るため、工学部受験では「必須科目」扱いである数学IIIを履修していなくても出願可能な入試科目設定になっていることが多いです。

数学IIIが「選択科目」扱いになっている(平成30年度、滋賀大学)

数学IIIが「選択科目」扱いになっている(平成30年度、滋賀大学)

たとえば、平成30年度の滋賀大学・データサイエンス学部の募集要項では、数学IIIが「選択科目」扱いになっています。

また、二次試験では、英語と数学の二科目受験という手軽さも魅力的に思えます(工学部のように、二次試験で物理と化学を課されることもありません)。

「計算ゴリゴリ」の数学IIIや、学習コストの高い物理・化学なしで入学することも可能な「お買い得」とも言える進路ですが、その「しわ寄せ」は、大学入学後にやって来ることをお忘れなく。

具体的には、「データサイエンティスト育成系」学部で勉強する数学を理解するためには、高校の数学IIIがどうしても必要になるので、結局は、大学入学後、勉強することになるのです(数学IIIから、キレイさっぱり、逃れられるわけではないんです)。

大学側もその「弱点」はよく認識しているようで、数学を苦手とする学生や、数学IIIを履修してこなかった学生をケアするためのバックアップ体制を敷いているケースが多いです(数学の補習クラスがあるなど)。

入学後のカリキュラムが異なっています

工学部情報工学科と、「サイエンティスト育成系」学部では、入学後のカリキュラムは(部分的に共通するところもあるが)基本的には、別物です。

あくまでも「たとえ話」の世界ですが、車の自動運転を実現するために、「データサイエンス」を活用するとしましょう。

工学部情報工学科では、車の周辺の風景画像を分析するための原理から深く学ぶことになります。

一方、「データサイエンティスト育成系」学部では、詳しい原理はすっ飛ばして、集まる風景画像データを元に、何をどう判断するか検討を重ねることが中心になるでしょう。

したがって、以下のように「ガッツリ理系」をやりたいと考えている人にとっては、「データサイエンティスト育成系」学部では、物足りなさを感じることがあるでしょう。

  • 人工知能の原理をガッツリ理解してから、使えるようになりたい
  • 音声や画像のデータ処理アルゴリズムを徹底的に研究したい

逆に、専門性を高めることへのこだわりは(そこまで)強くなく、どちらかと言えば、データの分析や意味づけに関心を寄せている方であれば、「データサイエンティスト育成系」学部という選択肢は、満足感を得られる可能性が高いです。

「データサイエンティスト育成系」学部と相性の良い資格

現時点では、「データサイエンティスト」という資格は存在しません。

データ分析という業務内容となれば、どうしても、難易度の高い資格が中心となりますが、一例をご紹介します。

  • ITストラテジスト(国家資格) 情報技術の活用により、企業活動を最適化するための戦略を提案するプロフェッショナル
  • アクチュアリー(民間資格) 統計学などのデータ分析手法を活用して、生命保険や年金など「不確定な事象」を扱うプロフェッショナル

いずれも、学生時代にサクッと取得できるようなものではなく、それなりの実務経験が要求される資格ですが、中長期的な勉強プランを立てて、将来取得することを目指すのもキャリア構築方法の一案でしょう。

結局、どういった人に向いており、どういった人に不向きであるのか?

「データサイエンティスト育成系」学部に向いている人、不向きな人について、まとめます。

一部、これまでにご紹介した内容と重複してしまいますが、頭の中での情報整理にもなるでしょう。

「データサイエンティスト育成系」学部に向いている人

以下のような方は、「データサイエンティスト育成系」学部がツボにハマる可能性が高いと言えます。

  • 自分が何をしたいか、まだ、そこまで明確に絞り込めていない人
  • 興味が幅広いので、「狭く深く」よりは、「広く浅く」で学んでいきたい人
  • 「専門性」をそこまで求めない変わりに、進級途中で柔軟に進路方向転換をする「余白」を残しておきたい人

「データサイエンティスト育成系」学部に不向きな人

以下のような方は、「データサイエンティスト育成系」学部よりは、工学部系の進路を考えた方が、満足行く結果を得られる可能性が高いと言えます。

  • 極めていきたい技術分野(人工知能、画像処理、信号処理など)がクリアになっており、高い専門性を追求していきたい人
  • 一点集中型で、とことん、技術を掘り下げていきたい人
  • 数学が得意なので、いろんなジャンルの数学関連講義を受講して、理系のスペシャリストを目指したい人

まとめ:本場アメリカでの「データサイエンス」動向など

以上、関西地区を代表する2校の比較や分析を交えながら、「データサイエンティスト育成系」学部について、広く浅く考えるキッカケづくりとなるような記事にまとめました。

最後に、「データサイエンス」発祥の地、いわば【本場】ともいえるアメリカにおける、データサイエンス教育環境について余談をはさんで、筆を置くこととにします。

「データサイエンス」の本場、アメリカにおける教育環境の整備状況

アメリカでは、「データサイエンス」を専門とする大学院が70以上に達しているとの報告もあり、高い専門性を持った人材層の厚さをうかがい知ることができます。

ビッグデータ活用の象徴的な存在でもあるAmazonやYouTubeにも、高等教育機関で「データサイエンス」のお作法を身につけた技術者が活躍するポジションが用意されています。

Amazonの「Data Scientist」求人情報

Amazonの「Data Scientist」求人情報

日本では、求人情報で「データサイエンティスト」というポジションを見かけることは、まだまだ少ないですが、アメリカでは「最も将来性のある職業」と考えられています。

2018年には、イリノイ大学(アメリカでもトップクラスの一流大学です)が、オンラインで「データサイエンス」の修士号を取得できるプログラムを開講するなど、「データサイエンティスト」ブームは過熱気味。

イリノイ大学のオンライン修士号コース

イリノイ大学のオンライン修士号コース

滋賀大学も、それを模倣するかのように、一部の教育コンテンツをオンライン提供していますが、質も量も「本場」との差は歴然としているのが現状(IT後発国である日本の、悲しい現実でしょう……)。

まずは、ハードルの低い、滋賀大学の無料オンライン講座の視聴をし、「データサイエンス」への理解がいっそう深まるでしょう。

イリノイ大学以外でも、データサイエンティスト関係のオンライン教育コンテンツを(無料か格安で)提供しているインターネットサイトは山ほどあるので、本人の努力次第では、日本に居ながら、世界最高峰、世界最先端のデータサイエンスに関する教育を受けることも可能な時代がやって来ています。

そういった最高峰の教育コンテンツを利用できるようにするためにも、英語の学習はしっかりやっておいて、損はしないでしょう。

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