目次
はじめに:エンジニア人生「集大成」としての高度区分(論文系)
こんにちは、げんごにあです。
社会人になってから、エンジニアとしての経験年数を重ねるにつれ、それを体系的に整理し、振り返りたいという願望が強まった方もいると思います。
本記事では、エンジニアのテッパン資格ともいえる情報処理技術者試験について、ベテランが受験することの多い高度区分(論文系)を効率的にクリアするためのノウハウをご紹介しています。
高度区分(論文系)に初めてチャレンジされる方はもちろん、一定のレベルで足踏み状態にある方も、一歩前進できるヒントを散りばめています。
筆者の経歴
高校数学教師を経てエンジニアに転職という、少し変わった経歴を持つ、三十代の社内SE(メーカー勤務)。
アプリ開発保守(内製と外注の比率は1:1)に十年以上携わり、新しいフレームワークを使いながらコードを書く時間が、一番好きです。
保有資格は、以下の三つ(いずれも一発合格)。
- ITストラテジスト
- システム監査技術者
- プロジェクトマネージャ
それでは以下、「自分が受験勉強しているとき、こんなページがあればよかった」と思えるコンテンツを情報発信していきたいと思います。
科目別の勉強アプローチ方法
午前I、午前II、午後I、そして午後IIの4科目は、出題形式も、難易度もバラバラの個性派ぞろい
それぞれの特性をうまく見据えた上で、勉強アプローチ方法を考える柔軟さが大切です。
午前I・午前II:スマホで制覇
「情報処理技術者試験 午前 過去問」でグーグル検索すれば、過去問をランダムに出題してくれるような、「過去問サイト」がいくつかあります。
これを通勤電車の中、スマホ片手にポチポチ解答するというスタイルで、とことん活用しましょう。
筆者が初めて高度区分を受験したとき、いきなり過去問を解き始めるより、「教科書」的な本を通読してからのほうが良いのでは?と当初考えましたが、実際やってみると、いきなり過去問に手を付けたほうが、回り道をせずに済み、効果的かつ効率的です。

午前の対策はスマホで十分
たまに、解答が間違えていたり、解説に不正確な記述があったりする「過去問サイト」もあるので、怪しいと思ったときは、IPA公式サイトへアクセスし、過去問の解答をチェックしました。
もし、「過去問サイト」の解説だけではよく分からない専門用語と出くわした場合でも、その言葉をグーグル検索すれば、親切な解説記事が見つかる便利なご時世。
午前IIのために、わざわざ本を買う必要はないと思いますし、買うとしても、数年で出題傾向がガラリと変わることはないので、中古本で十分だと思います。
午後I:出題者への「忖度」アンテナ
ネット上の合格体験記を拝見していると「午後Iは国語力」と言われる方が、結構いらっしゃいます。
高校時代、現代文が苦手だった筆者としては、「国語力」と言われても、それが何を指すのか、いまいちピンと来ません。
むしろ、現代文が苦手な筆者でも、高度区分(論文系)の試験に、ずっと一発合格してきたからには、ひょっとしたら、午後Iと「国語力」とは似ているようで、実は別物かも知れないです。

午後I突破に必要なモノとは?
極論すれば、午後Iって、IPA問題作成者への「忖度」だと思うんです。
問題文の書き方が多少あいまいであったり、設問へ誘導する「こじつけ感」が気になったりしても、IPAの出題クオリティにケチをつけて終わるのではなく、「こういう答えを期待しているんですよね」と寄り添う気持ち。
「忖度」の意味をネット辞書で引くと「他人の気持ちをおしはかること」とありますが、まさに、これ以上ないドンピシャの表現です。
具体的な勉強方法としては、午後Iの過去問を20個、ランダムに選び出し、以下の手順を繰り返すのが良いと思います。
- 本文を読む(25分間)
- 解答を作成(15分間)
- 採点、「講評」を読む(30分間)
この時間配分によって、毎日1個ずつ、午後Iの過去問を解くことを習慣づけると、一定のリズム感が維持でき、長続きさせやすくなります。
このとき重要なのが、納得できなかった「解答」や「講評」については、付箋や蛍光ペンでマークをつけて【残数管理】し、繰り返し、納得できるまで復習すること。
解きっぱなし(=解いたっきり放置)にしない「丁寧さ」はゼッタイ必要だと思ってください。
20個の過去問を「ひとまず」解くよりも、10個の過去問を「しつこく」解く学習の方が、はるかに効果的です。

「解きっぱなし」にせず、分かるまで【残数管理】していく
中には、とうとう最後まで納得できない「解答」や「講評」が出てくると思いますが、割合としては、全体のごく一部でしょう。
ほとんどは、いったん別年度の問題にチャレンジするなど「気分転換」した後に復習すると、理解できるようになるので、あまり気にせず進めて行くアプローチも有効。
納得できない問題からは、いったん手を引いて、後で戻って来る「柔軟さ」を持つということです。
もし【全部分かるまで次に進まない】という完璧主義スタイルに陥ってしまっていたら、時間がいくらあっても不足してしまうので。

「いったん手を引く」という柔軟さも有効
放置しない「しつこさ」、固執しない「柔軟さ」のバランス加減こそ、午後Iを制するキーです。
こんな「ふんわり」としたアプローチで過去問をこなして行くことが、IPA問題作成者の「出題意図をくみ取る」ためにも、非常に有効だと思います。
午後II:インとアウトのバランス
午前I、午前II、午後Iは「答え」が発表されているのに、午後IIだけ、「答え」がないんですよね。
そういう意味で、午後IIの対策に難しさ(もどかしさ?)を感じる受験者は多いと思いますし、筆者自身がその一人でした。
「答え」はないが、過去問はたくさん公開されている午後II。
散々悩みながら、午後IIの「とっつきにくさ」を乗り越えて、筆者が到達したのは、「インプット学習」と「アウトプット学習」にバランス良く取り組めば、午後IIはクリアできるという結論でした。
- インプット学習 知識を仕入れることに重点を置いた学習
- アウトプット学習 仕入れた知識を使うことに重点を置いた学習
インプット学習、アウトプット学習の詳細については、以下で触れていきます。
午後IIの「インプット学習」とは?
午前I、午前II、午後Iは、模範解答が公開されているため、「いきなり過去問」というアプローチが最適だと、ご説明しました。
一方、午後IIは少しばかり「事前準備」が必要となり、以下にて具体的な取り組みをご紹介したいと思います。
午後IIの過去問は重要。だが、何度リピートして読んでも「解答力」はつかない
午後IIのインプット学習として、午後IIの過去問だけをダラダラ読んでいても、一向に理解度は深まりません。
なぜなら、午後IIには「模範解答」が用意されていないため、仕入れた知識を使って考えるチャンスに乏しいからです。
誤解が生じぬように書いておくと、午後IIの問題文に「いきなり」目を通すこと自体は大変有意義だが、そればかりをやっていても、(アウトプットに直結する)インプット学習にはならないということです。
具体的に、午後IIの過去問を見てみましょう。

午後IIの問題文(ITストラテジストの例)
これは、午後IIの問題文(ITストラテジスト)の例ですが、区分は違えど、問題文の構造はほとんど同じです。
以下のような書きっぷりの文章が多いことに気づかれると思います。
- ABC(←何らかのIT業務)をする際には、XYZ(←何らかの工夫点)することが大切である。
- たとえば、ABC(←具体的)といった指標・目標値を設定し〜
- その際は、次のようなことが重要である。
続いて、設問では、何が問われているでしょうか。
以下のような書きっぷりの文章が多いことに気づかれると思います。
- 設問ア あなたが携わったABC(←何らかのIT業務)について〜
- 設問イ 「あなたの工夫点」系を問う内容
- 設問ウ 「あなたの改善点」系を問う内容
「問題文」には一度も出てこなかった「あなた」というキーワードが、「設問文」では多発していることに気づかれましたか?
「あなた」という新情報をプラスしないと、「設問文」には解答できない仕組みになっているため、たとえ、午後IIの「問題文」を何度リピートして読み返したとしても、午後IIの「設問文」に対する答えは浮かび上がってくることはないんです。
経験済みの業務領域なら書けるかもしれませんが、書きやすい出題テーマばかり練習しても、何が問われるか予測できない試験本番への対策としては、心細いかぎりです。
そこで、以下のような「インプット学習」が重要性を帯びるわけです。
IPAのサイトを熟読。自分で「なりきる」
意外と見落としがちなんですが、IPAサイトは超重要ソースです。
試験区分ごとに、以下のような情報が掲載されています。
- 対象者像
- 役割と業務
- 期待する技術水準
もし「知らなかった」という方は、今すぐチェックしておきましょう。
具体例として、ITストラテジストの掲載例です。

IPAサイト(ITストラテジストの例)
これは丸暗記するくらいに読んでおき、毎日の勉強前に読み返すくらいが、ちょうどいいです。
採点官が試験答案にマル・バツをつける基準は、ここに書いてある内容が「拠り所」となるからです。
IPAサイトと真逆のことを答案に書いたら、不合格街道まっしぐらです。
IPAサイトを「読んだ」だけで終わらせるのではなく、大切なのは、たとえ、自分がやったことのない業務であろうと、脳内妄想レベルでOKなので、以下を実践してみることです。
- 「対象者像」を満たす自分をイメージしてみる
- 「役割と業務」を果たしている自分になりきってみる
- 「期待する技術水準」が自分に備わっていると妄想してみる
やってみたところで、いきなり実力がつくわけではありませんが、受験区分の業務を遂行する「当事者意識」というのは、グンと高まるはずです。
受験区分と自分を強く結びつけてイメージするという作業は、一番大切かも知れません。
午前(午前I・午前II)と午後Iの過去問。午後IIへのインプット学習になる
実は、午前と午後Iの過去問は、午後IIへの良質なインプット学習ソースとなります。
繰り返しになりますが、「模範解答」が公開されているため、自分の理解度を評価しながら、学習を進められるからです。

最大限、有効活用したい過去問
午前問題と午後I問題で合格ラインを取れるようになることを目指しましょう。
- マル・バツ系の一問一答形式で知識を入れるのが好きな人は、午前問題から先に着手
- 長文朗読型で知識を入れるのが好きな方は、午後Iから先に着手
どっちにしろ最後は全部やることになるので、順番は気にしなくていいでしょうけれど。
午前と午後Iで安定して合格点をクリアできる水準に到達できたとき、午後IIのインプット学習としては、半分ほどが終わっていると考えて良いと思います。
『合格論文の書き方・事例集』を買う
活用できるものは、なりふりかまわず、どんどん取り入れましょう。
『合格論文の書き方・事例集』は、合格水準のサンプル論文を多数収録した書籍です。
新品だと三〜四千円しますが、多少版数が古くても、出題内容が大幅に変わることはないため、中古本でも良いから、楽天やAmazonで調べてみましょう。
なお、この書籍、収録論文のレベルには、かなりバラツキがあります。
「こんなウマい論文は到底無理」というものから、「これなら自分にも書けそうだ」というもの、中には「こんなのでも合格できるのか」というものまで、自分で付箋を貼り付けて、一番「現実的」なお手本を選ぶという使い方が良いと思います。
大切なのは、単にネタをパクるのではなく、自分が比較的よく知っている業務領域へとカスタマイズし、本番で活用しやすいように、書き換えていくことです。
午後IIの「アウトプット学習」とは?
インプット学習はけっこう複雑ですが、午後IIのアウトプット学習は、いたってシンプル。
午後IIの過去問しかないからです。
ただ、「どうやって」午後II過去問を使うかには、少しコツがいるところなので、それを具体的に見て行きたいと思います。
午後II過去問を使った演習方法
まずは、過去問の中で、一番書きやすそうな問題にチャレンジしてみましょう。
大多数の方は、鉛筆を持つ手が、ピタッと止まってしまうのではないでしょうか。
まずは、インプット学習で身に付けた知識をベースに、書きやすい部分から取り組むのが良いでしょう。
- 設問アが書けなくても、設問イ(設問ウ)なら、なんとか書けそうだ
- 設問イで問われている内容の全部は解答できないが、部分的であれば解答できるものがある
- どの設問も歯が立ちそうにないけれど、これに関連する午前IIや午後Iの過去問を結びつける作業なら、できる
上記は、「妥協」アプローチの例です。
受験生の精神衛生上、何も前進せず、ただ困って、立ち止まっているだけのシチュエーションが一番好ましくありません。
合格までの道のりって、「妥協」しながらも、頭と鉛筆が動いているうちに、ヒラメキが得られ、さらに前進できるということの積み重ねだと思います。
「部分的」に「妥協」するアプローチを取りながら、自助努力の限界にぶちあたった領域は、以下のように解決する手段があります。
- 午後Iの過去問で、使えそうなシチュエーションを探す
- 書籍『合格論文の書き方・事例集』で、参考にできそうな表現をストックする
インプット学習のときに使ったソースですが、理解度が深まってから、もう一度読んでみると、新たな発見が得られることは多々あります。
「もう読んだから……」という思い込みを捨て、初心に戻ってみると、そのまま全部まるまる引用できるネタはなくとも、「部分的」であれば、自分の答案作成へ役立てられる表現は、ゴロゴロ落っこちてると思いますよ。
おまけ)分かりやすく午後II対策を紹介している参考書
上記の方法で取り組まれると、時間はかかっても、きっと合格水準に到達する論文を完成できると思います。
以下の書籍で紹介されている内容も、本記事と似通ったものですが、より多くのページ数を割いているため、記述が具体的です。
必要に応じて、参考にしてみてください(Amazonでは立読みできる商品もあります)。
ITストラテジスト、プロジェクトマネージャの2区分しか販売されていませんが、他区分受験の方にとっても、十分、合格に向けてのヒントを提供してくれる良質コンテンツです。
まとめ:合格後には実益あるメリットも手に入る高度区分
高度区分(論文系)については、「難易度が高い」という共通認識がIT業界に形成されているため、取得できれば、大きな自信につながります。
また、試験へ合格するための論文特訓を通じて、日常業務で、ドキュメントを素早く作成できるようになるという実益あるメリットも、見逃せません。
本記事で紹介したような方法を取り入れながら、うまく試験準備を進め、一人でも多くの方が合格の二文字を勝ち取られることを願っています。
なお、試験当日は、眠たくならないボリュームの弁当を持ち込み、試験会場から外へ行く手間を省かれることを、お勧めします。
昼食後、これまでやってきた内容をパラパラ復習する時間をつくり出すことができます。