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工学部から大学院へ進むことのメリット、デメリット。【劣等生出身】の現役ITエンジニアによる検証レポート

投稿日:2018年12月14日 更新日:

はじめに:卒業から十年以上になり、つらかった大学院生活を、ようやく語れるように

こんにちは、げんごにあです。

ITエンジニアとして生計を立てる中、通勤電車が、大学の最寄り駅を通過するたび、かつて、苦しんだ大学院生活の日々を思い出します。

何度読んでもワケのわからない研究論文(しかも英語で書かれてる!)を要約するという課題を必死でこなしたり、プレゼンの仕方について教授から厳しく指導されたり……

山のような課題をこなす日々

山のような課題をこなす日々

大学時代どちらかというと「落ちこぼれ」の学生だった筆者 ——— それにもかかわらず、【周囲がみんな進学してる】とか【カッコいい】とかという理由だけで、大学院へ進学してしまいました。

背伸びに背伸びをして入学した大学院では、当然のことながら、ますます「すさまじい劣等感」を味わうだけで、楽しかった思い出は何一つありません。

あまりにも辛くて、大学院入学のことを「入院」、大学院卒業のことを「退院」と揶揄していたくらいです。

十年間という時間を経て、ようやく語れるようになった「記憶」

十年間という時間を経て、ようやく語れるようになった「記憶」

トラウマになりそうな「辛い日々」に耐え抜き、【逃げ去る】ように大学院を卒業してから十年以上が経ち、最近では、ようやく当時のことを語れるようになりました。

本記事は、工学部から大学院へ進学することのメリット、デメリットを【劣等生出身】の現役 ITエンジニアの視点から、検証したレポートです。

工学部から大学院へ進むことのメリット、デメリット

まずはじめに、工学部の中でも、成績優秀で、研究が好きだと言う学生さんは、まちがいなく大学院へ進んだ方がいいと思います。

こんな記事を読んでいる場合ではありません 笑笑

本記事が「読者層」と想定しているのは、以下のような方です。

■本記事の「想定読者」

  • 学部時代の成績が平均以下で、どちらかというと、勉強についていくことへ苦労気味
  • 将来、研究者になるコダワリはなく、メーカーの理系職種に入れたら十分と思っている
  • ホンネを言うと、大学院へ進む明確な理由がなく、なんとなく考えている程度

大学院へ行っても行かなくても、どっちでもいいけど、将来後悔しない進路選択をしたいという人たちには、参考になると思います。

メリット:課題創造、課題解決の経験とスキルが身につく

大学院が、他の教育機関(小学校、中学、高校、大学)と大きく異なるのは、学生が自ら「課題」を設定するという点にあります。

学校や教師から与えられる「課題」を、マジメにこなしていれば無事に卒業できた、「小学校〜大学までの世界」とは、大きく変わる部分です。

自ら「課題」を見つけることは、思いのほか、ハードルの高い仕事。

たとえ、どれだけ立派な「課題」だと思っても、十中八九、世界にいる、どこかの研究者が既に論文を書いているのを知って、ガッカリすることになるでしょう。

やっと苦労して見つけた、自分なりのオリジナリティがある「課題」に対し、それを解くためには、どのようなデータを、どうやって入手し、どう分析すれば良いかを見通した上で、来る日も来る日も「試行錯誤」の日々を送ることになります。

苦しみもタップリですが、辛い状況を耐え抜いて「課題」を自ら創り出し、修学期間、向かい合うことは、社会に出てからの問題解決スキルに役立つこともあります。

メリット:初任給が二万円くらい、高めに設定されている

院卒の新入社員に対しては、多くの場合、新卒時の給料が二万円程、(学部卒と比べて)高めに設定されています。

極端な言い方をすると、同じ実力、同じ仕事内容であっても、初年度は無条件に24万円/年くらいは厚遇されるということになります。

もっとも、近年では「実力評価主義」がトレンドであるため、学部卒と院卒の給与差に開きがあるのは、せいぜい入社五年以内(それ以降は、実力によって、純粋に給与額が変わっていく)のことだと思います。

大学院(修士課程)を卒業するのに必要な学費として、国公立でも150万円程度は必要なことから、これを五年間で割ると、30万円/年くらい。

【経済面】で、院卒がそんなに得をすることはないと言わざるを得ません。

メリット:研究職へのキャリア変更の道も残せる

大学院進学率が向上し、国公立大学であれば、卒業生の八割が大学院へ進むことも珍しくありません。

その結果、研究職を志願していなくても、大学院へ進学するケースも珍しくなくなっています。

大学院は、もはや、研究職の卵を要請するだけの学校ではないのです。

「研究者の卵」を育てるだけの場所ではない

「研究者の卵」を育てるだけの場所ではない

逆の発想をすると、研究職を志すつもりはないけれど、将来、研究職を目指したくなったときのために大学院へ進んでおくという選択肢はありかと思います。

学部卒より、院卒である方が、研究職に就ける可能性を高めることが可能です。

メリット:海外就職や海外移住では加点ポイントになる国も

「将来、海外へ進出したい」と考えている方であれば、どの国も、自国民の雇用を守るため、就労ビザの取得は厳しくなる傾向にあるということを知っておきましょう。

海外の現地企業へ就職、あるいは、日本企業へ入って海外駐在する場合には、就労ビザの取得が必要になりますが、このとき、大学院卒だと、就労ビザの判定基準で加点される国もあります。

つまり、大学院の学歴があれば、その国にとって【専門性が高く、我が国の科学技術発達に益するポテンシャルがある】という判断につながるのでしょう。

また、海外移住の際も、大学院卒は、学部卒とスコアで差別される国もあるため、自分の中で将来、海外で活動する計画のある方は、大学院進学は悪くない選択肢と言えます。

メリット:教員免許のランクをアップグレードすることができる

工学部では、数学や理科の教員免許を取得できる大学もあります。

大学で取得できるのは「一種免許」であるのに対し、大学院では、これを「専修免許」にアップグレードすることができます。

ただ、現時点では、「専修免許」を取得することによる金銭的なメリットは、ほとんどありません。

同じ「教職」でも、国によって社会的地位(評価)は様々

同じ「教職」でも、国によって社会的地位(評価)は様々

大学院卒でないと教職に就けないフィンランドを「お手本」に、日本の教育現場でも、専門的な知識を持った教員を養成するつもりで「専修免許」が設けられたのかも知れませんが、あくまでも「形式的な制度」に過ぎず、「専修免許」を取ることの旨みはゼロに近いという状態です。

もしも、周囲の先生が「一種免許」ばかりで、業務成績も横並びというシチュエーションであれば、「専修免許」を持っていると、ちょっとだけ、校長先生になりやすくなるかも?

免許の種類が気になる人は、取得することで、自己満足が得られる、といったところでしょうか。

メリット:一部の国家試験で優遇されるケースも

国家試験「技術士」では、受験資格として、所定の年数、実務経験を積んでいることが条件になります。

大学院修士課程(二年間)は、「実務経験」の年数としてカウントされるため、(学部卒と比べて)「実務経験」が二年、少なくても受験資格を得られるということになります。

一方、この「技術士」という国家資格を取得するメリットは、さほど大きいとは言えない(あまりない)のが、現在の状況です。

他にも、大学院を卒業することの優位性として、国家試験「弁理士」において、一次試験の一部が免除されるなどのケースもあります。

デメリット:中退時には、「学部卒」扱いとなり、「新卒」の資格も失ってしまう

大学であれば、単位が不足していたり、卒業論文のクオリティが多少低くとも、先生や学校がサポートしてくれる場面もありますが、大学院では、基本「本人の責任」という扱いです。

二年間というタイムリミットつきで、「修士論文」として研究成果をまとめる必要があり、そのほとんどすべてを、自己責任で推進することが求められます。

超ざっくりですが、以下のような手順に沿って、研究の骨組みをつくっていく孤独な作業です。

■研究の流れ

  • 研究テーマ探し
  • 先行研究の調査
  • どのような観点で、「オリジナリティ」や「新規性」を出すかのアイデア具体化
  • 研究の推進(データ収集、分析、考察)

もしも、こういった活動を遂行する能力が不足すれば、二年間という制限時間内に終えることができず、留年、場合によっては中退となる可能性も。

大学院を中退時、最終学歴は「学部卒」となりますが、「新卒」扱いにはならないのが、痛手です。

まだまだ【新卒採用志向】の根強い日本社会において、一生に一度しかない「新卒」チャンスをみすみす逃してしまうことは、一生後悔することにもなりかねません。

デメリット:社会へ出た後、学費に見合う経済的リターンを得られない(ことが多い)

学問は経済的メリットだけで語れないものですが、ドライな見方をすると、出した学費以上のリターンが帰ってくる人は幸運なケースだと思います。

げんごにあは、「ほぼトントン」でしたが、大学院の二年間、(もし社会人として就職し、働いていたら)得られていたであろう収入の機会は逃しているので、そこも考慮すると、一千万円近くの損失額が出ることになります。

投資した学費を「回収」することは、なかなか難しい

投資した学費を「回収」することは、なかなか難しい

私立の大学院へ進むと、よっぽどのことがない限り、社会に出てから学費以上のリターンを得ることは難しいでしょう(大学教員など、大学院の学位が必要不可欠な進路ケースは除く)。

デメリット:アクションを起こすまでに、「理屈」や「理由」が必要になる

大学院では、とにかく、理論的な分析結果が求められ、曖昧な考察はご法度とされる世界。

逆に、実社会に出てからは、なんでもかんでも理論で片付くことは少なく、むしろ、社内政治などの【力関係】によって仕事の方針が変わることも珍しくはありません。

大学院のアカデミックな世界に長居し続けると、ナゼ?を追求する癖がつくあまり、社会に出てから求められる、(学部卒の社員が持っているような)フットワークの軽さが失われるかも知れません。

もちろん、理論的に考える習慣は、強みとして働くこともありますが、度が過ぎると、実社会の現場では「弱み」にもなってしまうということです。

デメリット:大学院生活を送るうちに、世の中が不景気になって、就職しづらくなるかも

世の中の景気によって、同じ「スペック」の学生でも、就職活動が楽勝になることも、苦戦することもあります。

もし、景気の良いタイミングであれば、安易に大学院進学を考えず、良い就職先が見つかれば、進路を決めてしまうのも手です。

「職探し」の難易度は、景気によっても、大きな影響を受ける

「職探し」の難易度は、景気によっても、大きな影響を受ける

逆に、景気が悪ければ大学院へ進学し、専門知識やスキルを高めて、就職活動を有利に進める布石とするのも一案です。

将来の景気がどうなるかは予想不可能なので、直近時点での景気状況は、大学院進学を考える上でも、必ず判断材料に含めるようにしたいところです。

デメリット:就職面接で専門的な質疑応答が増え、ハッタリがききづらくなる

大学院生の就職面接では、専門分野の知識やスキルへ期待する企業も多く、研究テーマについて、かなり突っ込んだ質疑応答が展開されるケースも少なくありません。

特に、大学院卒の先輩社員(技術系)が面接員に含まれていることも多く、勉強をしてなかったら即バレすると思っておいた方がよいでしょう。

「理工系の学生であれば、大学院へ進めば就職しやすくなる」というのは一理ありますが、それは、大学院生活に相応の「大変さ」があり、人間としても研究者としても、一皮、二皮、剥けるためです。

大学院卒は給料が高いため、企業側も、かなりガッツリ評価しようとしてきますので、学生生活でしっかり研究しておかないと、ぼろが出てしまうでしょう。

まとめ:大学院とどう付き合い、大学院生活から何を得るかを明確にしよう

いかがでしたか。

工学部から大学院へ進むことのメリット、デメリットを書き連ねてみました。

正直、社会に出てから五年も経つと、最終学歴のことなど、誰も気にしなくなります(その人の、業務上でのアウトプットがすべてです)。

よく考えて、かしこく大学院を「利用」したい

よく考えて、かしこく大学院を「利用」したい

大学院は、いいことばかり、わるいことばかりではなく、大学院とどう付き合い、大学院生から何を得るかを明確にした上で、進路を考えることが重要です。

すべての読者の方が、本記事でご紹介したようなメリット・デメリットを念頭に入れた上で、ご自身にとって「ベスト」な進路選択をされることを願いつつ、筆を置きます。

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